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「HA16 PCB」を低電圧仕様で動作させる。(その1:回路編)

2015年10月08日(木) 13時25分

始めに

※コチラは、当社にて「独自検証の元、定数やパーツの選定」を行った上で記事にしています。

今回より「回路製作から、実際の実装に至るまで数回にわたって」紹介してみたいと思います。尚、この記事に尽きましては、製造元の「STRV's工房様」は一切関係ありませんので予めご了承下さい。

「HA16 PCB」とは?

HA16 PCB(Rev.1.0.)」ですが、元々は「5532」を、最適に動作させる為に製作された回路基板です。

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多きな特徴の一つに、周波数特性を良くする為に「Triple the Current to a Load」タイプの回路を採用しています。これは、ドライブ回路として2つのオペアンプを使用し特性補助等の為に、出力定数の異なるオペアンプを1つ使う事で、負荷特性や周波数帯域に依存し難い安定した特性を得る事が原理的には可能な回路になっています。

しかし、特性を引き出す為に実際は動作させる電圧が高く無いといけないという点に注意が必要でもあります。(実際は使用しているオペアンプに起因する部分が大きいです。)

今回は、電池駆動からACアダプターでも問題なく駆動できるように「±2.4V~6V」までに限定した形で動作させる事を前提とし、部品や定数の選定を当社にて行ってみました。

使用パーツの紹介

まずU1に使用するオペアンプですが、今回は海外での採用例も多く、当社でも人気のオペアンプ「OPA2209AID」を使用しました。NE5532にスペックや仕様が近く、広範囲電圧動作が可能で特性面も優れ「出力面でも安定しやすい」という理由によるものです。

但し、ヘッドホンを上記の電圧範囲で駆動するには、ドライブ力という面でやや劣ってしまっている面もあります。そこで、U2のドライブ段には負荷容量に強く、高速で安定性の高いオペアンプで当社製品にも多数の採用例を持つ「LMH6643MA/NOPB」を選定する事にしました。低負荷時においても安定した電流が供給できスウィング力が高く12.6Vまで電圧を掛ける事が可能な、高速オペアンプになります。

回路定数及び製作時のワンポイント

コチラが回路図になります。

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オリジナルに比べ、低電圧動作に加えて「U1とU2の品種が異なる所為」があり、回路定数が大きく異なっております。尚、冒頭にも書きましたが「この回路図は当社の方で独自に検証し、製作した回路図」になっておりますので、その旨をご注意下さい。(製作の際は、必ず自己責任にてお願い致します。)

U2を始めとした、ドライブ段の「R8~R10 」に今回は抵抗を挟んでいます。これは、実負荷を接続した際の位相周りの改善の効果を狙って、選定したオペアンプに合わせてかつ、共通部品になる様この値を使用しております。U1Bの方は、周波数帯域に対して特性の方がフラットに近づくように定数を調整していますが、再生環境によっては「ここの部分はキャンルしてしまっても良い」ので、無理に利用する必要性は無いと思います。(この場合、R11を未実装とする事で対応が可能です。「R5とR8」は必ず実装しておいて下さい。)

全体的に、定数の方は電圧や使用するオペアンプに合わせて調整を行っているので、オリジナルとは定数が大きく異なっています。

「C3」のコンデンサーは、容量が小さく入手が難しいので「マイカコンデンサー」を使用するのがオススメです。R1の抵抗については「20K~30Kの範囲」で選択してもらえれば問題ないと思います。

今回の回路図では「増幅率が2~6倍まで」を対象とした設計になっています。増幅率を増やす場合ですが「R4」は変更せずに「R3」の値を変更することで対応します。参考までに、増幅率に対する抵抗の値を紹介してみます。

  • 3倍:R3…1KΩ
  • 4倍:R3…680KΩ(厳密には約3.9倍)
  • 5倍:R3…500Ω(無ければ470または510でOK)
  • 6倍:R3…390Ω

「R11~R13」ですが、この回路では電圧がそこまで高くなく、それに伴い抵抗の値も小さいものになっています。耐圧はできれば「1/2Wのタイプ(最低で1/4Wタイプ)」を使うようにしてください。

「C1」は、フィルムコンデンサーの使用を推奨しますが、無ければ電解コンデンサーでも構いません。尚、その際ですが「+側の極性を必ずCN1とは逆の方向に向けて実装」するようにして下さい。因みに、使用する容量ですが「1~22uF」を推奨します。

また、電源回路部についてですが「C6・C7」については「径が12.5Φまでで、耐圧が6.3V以上で容量が470uFから3300uF以下」のものが推奨になります。「C4・C5 / C8・C9」については「0.1uFのフィルムコンデンサー」が推奨です。

後は、実装ミスが無いか等を目視でまずは確認して下さい。最後に参考例としてパーツ一覧を掲載させて頂きます。ご参考になれば幸いです。(部品表は片ch分となっています。)

推奨パーツセット一覧

部品番号部品名値、仕様等補足
U1OPA2209AIDSOIC-8PIN変換基板等でDIP-8PINサイズに変換して使用して下さい。
U2LMH6643MA/NOPBSOIC-8PIN変換基板等でDIP-8PINサイズに変換して使用して下さい。
U1・U2DIP-ICソケット8PIN2×4 300mil(必要な人向け)
C1LGMFC-63V1uF63V1uF積層メタライズドフィルムコンデンサー
C2UPZ100V120pF100V120pFPPフィルムコンデンサー(100pF~150pFの間でOK)
C3DM5B220300V22pFマイカコンデンサー(フィルム系コンデンサでもOK)
R1LGMFS50-203D20KΩ(1/2W)金属皮膜抵抗
R2LGMFS50-102D1KΩ(1/2W)金属皮膜抵抗
R3・R4LGMFS50-202D2KΩ(1/2W)金属皮膜抵抗
R5~R7LGMFS50-101D100Ω(1/2W)金属皮膜抵抗
R8~R10LGMFS50-681D680Ω(1/2W)金属皮膜抵抗
R11LGMFS50-100D10Ω(1/2W)金属皮膜抵抗(未実装もしくは「5Ω」でも可)
R12・R13LGMFS50-1R0D1Ω(1/2W)金属皮膜抵抗
C4・C5LGMFC-100V0.1uF100V0.1uF積層メタライズドフィルムコンデンサー
C6・C7LXZ10V3300uFLXZ10V3300uF(高さを記にしない人向け)
C8・C9LGMFC-100V0.1uF100V0.1uF積層メタライズドフィルムコンデンサー
  • その他、推奨パーツ等
部品番号部品名値、仕様等補足
C6・C7KZH6.3V1200uFKZH6.3V1200uF(高さを気にする人向け)
R3LGMFS50-102D1KΩ(1/2W)金属皮膜抵抗 / 増幅率を3倍にする場合
R3LGMFS50-681D680Ω(1/2W)金属皮膜抵抗 / 増幅率を約4倍にする場合
R3LGMFS50-501D500Ω(1/2W)金属皮膜抵抗 / 増幅率を5倍にする場合
R3LGMFS50-391D390Ω(1/2W)金属皮膜抵抗 / 増幅率を約6倍にする場合

最後に

今回は回路編ということで、ここまでの記事とさせて頂きます。次回は「その2:電源部にまつわるポイント」について紹介していく予定です。(近日、公開予定です。宜しくお願い致します。)